君想歌

ずっと男装だと怪しまれるから。


文句を言う吉田を置き去りに
明里の部屋の襖を叩く。


「和泉?入って入って」

明里の声に遠慮無く部屋に入る。


「災難やったなぁ。
女将はんに玄関先で恋仲の方に
抱きつかれてた聞いたで?」


「子供より扱いが難しいから」

苦笑しながら和泉は明里に
着物を着付けてもらう。

残念ながら、この着物は
帯の結び方が違う。

人にしてもらわねば着られない。


「もう。妬けるわ」

明里は頬を膨らませる。

昼間とは印象が変わったのは
艶やかな着物に変わったからか。


喋り方は子供っぽいのに
見た目は大人びた女性。


どこか噛み合わない。


「もう少し待ってな。
紅だけ乗せよ?」


唇に赤い紅を乗せ準備は整う。

「部屋は奥の大部屋。
気ぃつけてな?」


明里の言葉に頷き和泉は
礼を言い廊下に出た。


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