君想歌

手に乗った簪を眺めつつ
帰路につく。


「明里さんに貰ったんですか?」

隣の沖田が尋ねる。

山南は少し話すことがあると
店に残った。

「うん。友達の印だって」


赤色の簪を無くさないように
しまい込んだ。


「ちょっと寄り道しましょう」

沖田は和泉の返事を待たずに
先をどんどん歩く。


見慣れた店に引きつった顔で
沖田を見上げた。

「食べる気?」

朝餉から間もないというのに
まだ食べるのか。


「はいっ」

元気に頷いた沖田に一気に
和泉は脱力した。


「和泉、朝餉食べてませんよね。
甘味食べないんですか?」


お品書きを見ていた沖田は
顔を上げた。


「八十八っちゃんが握った
おにぎり食べたから」

山南の部屋に行く前に食べた為
お腹は減っていない。

だから和泉は甘味は食べずに
お茶だけ頼んだ。


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