君想歌

背中に感じる心地好い温もりに
時間を忘れかける。


「そろそろ行かなきゃ」


自分の中に渦巻く別れを惜しむ
気持ちを見て見ぬ振りして。


吉田を振り返った。


「ん、送りは要らないね」

気付いているのか深く聞かない。


「じゃ、またね」


どちらからとも無く口づけをし
振り返らないまま二人は別れた。



「気付いてたんや?」

隣に立った山崎は和泉の数歩
後ろに着いた。

「誰の命令」

「俺の好奇心や。
姉ちゃん、裏切らんなぁ」


クスクスと山崎の笑いが
夜の町に響く。

ある意味、不気味。

思いつつも口には出さない。


「組の情報は一切漏らさんのやな」


「当たり前だよ。
それはしない」


屯所に歩みを進める和泉は
当然だという風に言い切る。

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