君想歌

*吉田稔麿*

和泉が俺から目を離して
水面を見つめる。


月が雲で隠れているせいで
辺りはそう遠くまで見通せない。

俺が真実を言っていく度。

やりきれない感情を和泉は
押さえているのだろう。


俺の左手に重ねられた手が
するりと離れる。


「無かったら良いのにね」


手を後ろに回して歩く和泉は
ふと呟いた。

「だってさ。
もしこの時代じゃなかったら。
稔麿と上手くいってただろうし」

私が、もし。

「町娘なら、良かった?」

表情は見えないけど。

切なそうに笑ってるのが
目に見える。


「和泉は和泉のままで良い」


彼女の後ろに立って抱きしめた。


直感的に。

本当に最後かもしれない、
なんて縁起でも無いことを思う。


自分から祇園祭の約束を
持ち掛けたくせに。

無責任だ。


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