君想歌

六月の上旬だったか?

毎年の記憶を手繰る。


「時間は約束出来ないけど。
構わない?」


涼しさを感じさせる夜風に
和泉の前髪が揺れる。

頷いた吉田は楽しみなのか
笑みが絶えない。

「うん」


今日呼び出した理由って
それだけなのかな。

わざわざ監察まで使って?

流石にそれは危険行為。


「他には?」

先を促すように和泉が問えば
吉田は他人事のように続けた。

「今日で。
こうやって和泉と会うのが、
最後になるかもしれないね」


「え?」


「俺と和泉がこうやって会って
平穏で居られるのが。
今日できっと最後だよ」


吉田の声に和泉の目線は
暗い川面に移る。


表立って会うのは厳しい。

今の現状を考えれば、
当然のこと。


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