君想歌

自然と足が向かった場所は
元々家が在った場所。


あんな事件があったから勿論
今は空き地となっている。

そして。

煮詰まった思考を冷やすため
自然と此処へ来る癖。

自分の過去への縛られように
頭が痛くなる。


取り壊されずに残った塀へ
背を預ける。

目を閉じていた和泉の思考が
現実味のある声で引き戻される。

「にゃ?」

ちんまりと和泉の前に座った
黒い塊、もとい猫。


「……」

和泉を見上げる猫の首には
見慣れた髪紐が付いている。


近くに生えた猫じゃらしを
一本千切り鼻先へと持っていく。

さも迷惑そうに手で払う
その姿に笑みが漏れる。


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