君想歌

夜には巡察の予定が入っている。

きっと吉田は組の巡察時間を
把握済みだろう。

和泉が答えるのを待たずに
山崎は立ち上がる。


「ほな俺はちゃんと伝えたで。
帰り、気いつけてな」


言葉に心配を滲ませながら
山崎は屋根から消えた。


「……」

風に揺れて虚しく鳴る鈴を
音が鳴らないように握る。


気持ちの整理が未だ
和泉の中で出来ていない。

そんな時に会ったとしても
迷惑になるだろう。


会いには行けない。


それが答え。


「あ、こんな所に居たんですか」

前髪に寝癖がついた沖田が
屋根に現れる。


両方の意味で溜め息を吐き
和泉は沖田の前髪に手を伸ばす。


厄介な寝癖は押さえただけでは
直らない。

後で水でも付ければ良いか。


「……最近、和泉変ですよ。
喧嘩でもしたんですか?」


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