君想歌

「何さ。
幾ら悠だって略奪愛は
許されないよ」


「しませんっ!!
そんな事したら殺されます」


今日は何でこんなに邪魔が
入るんだろ、と嘆いた吉田は
耳元で囁く。


「早く帰って来ないと
お仕置きだから」


くすくすと笑った吉田は
和泉を部屋から出した。



旅籠を出て表まで来た二人は
河原に腰を下ろした。


「全部聞きましたか?」

吉田稔麿という人物の事。


白い雲の流れる空を見上げ
悠は訊ねた。


「……うん。
まだ全部知った訳じゃないかな?」


度々、過去を懐かしむ目を
するのは胸の内に思う事が
あるから。


「昨夜、栄太郎が自分から
話してくれた。
でも何と無く分かってた。
栄太郎が倒幕派の人間だって」


「え?」


転がった丸い石を手の上で
跳ねさせながら悠を見る。


「だって“瀬戸家”は長州側。
悠と私が引き離された。
でも悠は生活に困ってなくて
栄太郎とも仲が良い」


高く石を虚空に放り投げ
右手で掴み取ると。


「結論として悠は長州側だ。
ならば必然的に栄太郎は
尊皇攘夷派の志士ってこと」


的確に真実を導いてみせる。


.