君想歌

「というか。栄太郎。
今日は髪結ってないんだね?」

普段と違う髪型だと
また印象が違って見える。


「ん〜。髪紐あげたんだ」


顔に掛かる髪を背に流すと
吉田は文机の下に手を入れた。

何が出てくるのか、と
不思議そうにしていた和泉は
その存在を認めた瞬間ぱっと
目を輝かせた。

「見て?可愛いでしょ」


吉田の手の上には黒猫が
乗っている。


「黒猫だからかな。
捨てられてた」


夜の道で震えていた猫を見て
迷うこと無く拾い上げたらしい。


すっかり心を許しているらしく
手の上で尻尾を振っている。


柔らかい毛並みを撫でてやると気持ち良さそうに目を閉じる。

「ずるい」


さらりと和泉が口にした言葉に
吉田は視線を上げた。