君想歌

言葉を続けようとして
口を開きかける。


だが僅かに開かれた口は、
物を言うことが無いままで
閉じられた。

上から和泉の表情を眺めていた
吉田は目を伏せる。


それは呼吸一回分の間だけで
いつもの笑みが口元に浮かんだ。


「和泉。お腹減った」


場違いな言葉に脱力して
溜め息を吐いた。


吉田の腕の中から抜け出ると
刀と一緒に置かれた包みを
彼に押し付けた。


「季節限定らしい。
文句は受け付けない」


嬉々として包みを開く吉田を
横目で見つつ苦笑した。


「ん〜」


お茶でも貰って来ようかと
腰を上げれば吉田は不満げに
口を尖らせる。


同時に袴を引っ張られ
後ろへと倒れ込む。