君想歌

半分以上追い出されるように
屯所を出た和泉は旅籠の敷居を
跨いだ。


勝手に栄太郎の部屋に入るのが
日常茶飯事になりつつある。


襖を開ければ開いた窓から
通りを眺めていた栄太郎が
和泉の姿を見て頬を緩めた。


「和泉。もう桜咲くかな?」


栄太郎の隣に座るとゆるりと
後ろから腕が回る。


「鴨川沿いのは後少しで
咲きそうだったよ?」

「見に行こ。一緒にさ」


ぽすっと栄太郎の胸に収まると
満足したのか片手が和泉の髪を
撫でる。


「うん。
栄太郎はさ。
桜は満開の時と散り際と。
どっちが好き?」


上を見上げるような格好で
尋ねる和泉に僅かに首を傾げた。