君想歌

土方の説教が始まる中で
飛び火しない内にと和泉は
気配を消し静かに立ち上がる。


だが土方がそれを見逃すはずも
無く、


「おい和泉。どこ行く」


あっさりと袴を掴まれる。


「……ちぇっ」


悪戯が上手くいかなかった
子供のように拗ねる和泉に
ポイッと山野を廊下に放り出し
土方は和泉に向き直った。


「鈴屋、通ってるんだろ?」


土方の言葉に手のひらを握る。

「そ…だけど」


歯切れの悪い答えに土方は
軽く溜め息を吐く。


「妙な勘繰りすんじゃねぇぞ。
羽織りを脱いだら新撰組の事は
頭から消せ。
吉田を信じとけ」


副長がこのような言葉を
言うなんて許されない。

しかし女の幸せを和泉には
少しでも味わってもらいたい。

それが土方の心境だ。