君想歌

色褪せることを知らない
決して忘れもしない記憶が
鮮明に蘇る。


「ごめん。
悠に聞いても仕方ないね。
遅くなるから帰るよ。
和泉に気取られないようにして。

あの子、妙に勘がいいから」


吉田は念を押して悠の家の
戸を静かに閉めた。



人通りの少ない裏道を通り
旅籠に戻る。


「稔麿っー!!」


部屋の襖を開けた瞬間、
一瞬にして体力が失われた
気がする。


手を広げて俺に勢いよく
抱きつこうとしてきた
馬鹿を直前で避けた。


「ぎゃ…」

べしゃっと廊下の壁に衝突
したであろう高杉晋作に
一度も視線をやることなく
部屋に入った。