君想歌

一度だけ聞いた家の場所を
頭の隅から引きずり出す。


「悠!!」


「うわぁっ!?」


バサバサバサっと派手に
書物を落とし突然の訪問客に
悠は目を丸くしてする。


「和泉さんですか。
もう驚きました……」


咄嗟に引き寄せた刀から
手を離してほっとしたような
表情を悠は浮かべた。


床に散らばった書物を
集めるべく伸ばした
右手を和泉は掴む。


「悠」

「どうしたんですか?」

「悠は、私の兄弟なの?」


和泉が言った言葉に
悠は戸惑っている。


「違いますよ。
大体名字が違うでしょ」

目を合わせずに書物を
腕に抱え悠は立ち上がる。


「これ。
やっぱり持ってる」


袴に固く結ばれた和泉と
色違いの鈴。


いつも動くたびに小さく
音が鳴っていたそれ。