君想歌

「和泉ぃぃぃい!!」


斎藤が近藤に呼ばれた隙に
部屋を抜け出した和泉は
屋根へと上がっている。


「何処だあぁぁあ!!」


土方の怒声が屯所を揺らす。

生憎、和泉には大人しくする
という言葉が辞書には無い。


「あーあ。
土方はん怒ってもうて」


仕事着で屋根の上に立って
呆れた眼差しで和泉を見下ろす山崎を見上げる。


「いーじゃんか……」


「知らへんで。
あぁっ!!思い出したわ!!
なんや土方はんに届いた手紙に
大人しくしとかへんかったら
会わへんとか書いてあった
気ぃがするわ……」


大袈裟に言った山崎だが
これは真っ赤な嘘である。


和泉は動きを止めると
押し黙る。

「…………」


山崎の言葉に和泉は
苦々しい表情になった。