君想歌

桂と乃美が相談したあの日から
二月が経とうとしていた。



「何をしているのだ!!
薫はっ」


荒々しく言い放ち拳を畳に
叩き付けた桂は顔を歪めた。


「なぜ逃げないのだ!!」


わざわざ判るような刺客を
送り込み命が狙われていると
教えているというのに。


動きを見せようとしない
瀬戸に桂は憤りを隠せない。


「まさか……」


死ぬ気なのか?


一つの考えが胸を過る。


あぁ。
それなら合点がいく。


文を出しても、
近状報告をしてきた馬鹿者。


刺客を送った次の日に
長州藩邸の門に手紙つきで
彼らを縛り付けた馬鹿者。



全てを知っていたのだ。



「瀬戸家を……潰す。
娘もだ」


たまたま通り掛かったであろう
稔麿が動きを止めて此方に
意識を向けている。