君想歌

だが何時かはこうなる事は
判っていた。


長州から逃げた身である
薫たちを藩が追わないはずが
あるまい。


「ご丁寧に文を置いていって
くれたよ」


流麗な字で掛かれたそれは
見飽きた筆跡で。


「本当に逃げないのですか?」


「あぁ」


弥生は薫の傍に膝をつくと
確認を取るように訊ねた。


「和泉には悪いがなぁ……」


呑気に寝ている和泉を
愛しそうに撫でる薫は
目尻を下げた。


藩邸にいる悠の存在を
薫は勿論知っている。


彼に危険が及ばぬように
するには、


自分たちが死ねばよいのだ。