君想歌

桂は松陰が死んだ時のような
悲しい思いを吉田にさせたく
なかった。


「だからって。
和泉を襲う理由が無い」


感情を押さえきれずに思わず
関係の無い悠を睨んでしまう。

身体を固くした悠に小さく
吉田は謝る。


「それだけは許さないから。
まぁ……桂さんの考えは
分かったから」


吉田は置かれていたお茶を
片手で持つと悠を残して部屋を
出ていった。





一人取り残された悠は膝の上に
乗せた手のひらをぎゅっと
握った。


「……俺だって…」


うつ向いた表情は見えない。


力を入れすぎた手のひらに
痛みが走りゆるりと手を開く。

血が滲んだ手のひらを見つめて
いる悠に高杉は音をたてずに
襖を閉じた。