君想歌

塀に手をついて顔を歪めて
荒く息を繰り返す女。


稔麿の女だっ。


勢いのまま、地に倒れかけた
身体を抱き止めると短刀を
屋根に向かってぶん投げた。


やべぇ……。


忍が投げたクナイには毒が
塗ってあったらしい。

既に色を失った顔とは逆に
左足首からは血が瞬く間に
地面に広がる。


「玄瑞は……無理かっ?」


幕府の狗の女なんて、
診てくんねぇか?


落ち着け。
まず、安全な所につれていく。

それが先決だ。


力が抜けた身体を抱き上げると
旅籠までの道を一直線に駆けた。