12月の普通の日《短編》




「自分で言いなさいよ~」


お母さんが茶化したように言う。


「無理。恥ずかしい」


「何それ!
全く本当に男の子かしら?」


「うっせ!
ちゃんと伝えてくれよな?」


「分かったわ。何?」


「・・・琴音、今まで本当にありがとう。
お前と過ごした日々すっげぇ楽しかった。
オレは女なんかできてねぇし、お前を嫌いになったわけじゃない。
・・・必ず迎えに来るから、それまで待ってて。
って言っといて。」


敦・・・?


え・・・?


何・・・?


どういう事・・・?


涙を流す事も忘れ、ただただ呆気にとられる。


必ず迎えに来る、って期待してもいいの?


「まさか、敦くんの好きな人って・・・」


まだ私なの・・・?


お母さんの言いかけた言葉を慌てて敦が止める。


「わぁー!!
それ言っちゃだめ!!
想うだけにしろよ!!」


「はぁーいっ」


「そんじゃ、伝えといて。
オレ準備しなくちゃ。」


「分かったわ。
じゃあね、敦くん。
今までありがとう。
また明日も寄ってくれるんでしょ?」


「うん。寄るよ。
じゃ。」


そう言って玄関がしまる音がした。


「・・・--琴音?
そこに居るの分かってるんだからね、お母さん。」


お母さんが見えない私に話しかける。


まさか、バレてたなんて・・・


「お母さんあんまり口出ししない方がいいと思うけど、敦くんの気持ち聞いたでしょ?
あんたも好きなら答えてあげなくていいの?」


私の胸に突き刺さる言葉。


けど決して冷たくなんてない。


温かく私の心を満たしていく。


そうだよ。伝えなきゃ。


私は残りの階段を一気に駆け下りる。


そしてお母さんに向かってこう言った。


「行ってきます」


そしたらお母さんは笑って


「行ってらっしゃい」


と言った。