「自分で言いなさいよ~」
お母さんが茶化したように言う。
「無理。恥ずかしい」
「何それ!
全く本当に男の子かしら?」
「うっせ!
ちゃんと伝えてくれよな?」
「分かったわ。何?」
「・・・琴音、今まで本当にありがとう。
お前と過ごした日々すっげぇ楽しかった。
オレは女なんかできてねぇし、お前を嫌いになったわけじゃない。
・・・必ず迎えに来るから、それまで待ってて。
って言っといて。」
敦・・・?
え・・・?
何・・・?
どういう事・・・?
涙を流す事も忘れ、ただただ呆気にとられる。
必ず迎えに来る、って期待してもいいの?
「まさか、敦くんの好きな人って・・・」
まだ私なの・・・?
お母さんの言いかけた言葉を慌てて敦が止める。
「わぁー!!
それ言っちゃだめ!!
想うだけにしろよ!!」
「はぁーいっ」
「そんじゃ、伝えといて。
オレ準備しなくちゃ。」
「分かったわ。
じゃあね、敦くん。
今までありがとう。
また明日も寄ってくれるんでしょ?」
「うん。寄るよ。
じゃ。」
そう言って玄関がしまる音がした。
「・・・--琴音?
そこに居るの分かってるんだからね、お母さん。」
お母さんが見えない私に話しかける。
まさか、バレてたなんて・・・
「お母さんあんまり口出ししない方がいいと思うけど、敦くんの気持ち聞いたでしょ?
あんたも好きなら答えてあげなくていいの?」
私の胸に突き刺さる言葉。
けど決して冷たくなんてない。
温かく私の心を満たしていく。
そうだよ。伝えなきゃ。
私は残りの階段を一気に駆け下りる。
そしてお母さんに向かってこう言った。
「行ってきます」
そしたらお母さんは笑って
「行ってらっしゃい」
と言った。

