12月の普通の日《短編》










「オレ、好きな女いるから。」





返ってきた言葉は意外で。


「ふーん・・・。
でもここら辺に好きな人いるなら敦くんだけこっち残ればいいのに」


お母さんが面白そうに言う。


「オレだって残りたいよ。
将来お嫁さんにするって約束したし。」


大真面目に言う敦の言葉を聞いて私はその場にうなだれた。


声を押し殺して、泣いた。


敦にとって私は邪魔な存在だったってこと?


そんな・・・。


「うふふっ。
それで?」


「オレ、もし結婚したらあいつに苦労させないようにしようと思ってさ。
いい大学出ればいい仕事に付けるから。
こっち、オレが希望する学校ねぇんだよね。
あっちならあるから。
そんで結婚できるようになったら必ず迎えに来るつもり。」


あぁ。


私は聞いちゃいけない話を聞いた。


結婚の約束までしてたんだ。


あいつに苦労させないように?


そのために、私はこんな思いをしているの?


いい加減にしてよ・・・。


最後くらい、ちゃんと面と向かって言ってほしかった。


「そうっ!
それじゃ、いい仕事についてこっちに来たらまた寄ってちょうだいね!」


「了解!
あ、あと・・・」


敦が言葉を続ける。


「これ、琴音に渡しといて」


「あらヤダっ!
鞄忘れてたのかしらっ!
ありがとね」


そしてお母さんが思い出したようにこう言った。



「あ、そーよ!
今、琴音呼んでくるわね!
きっと敦くんが引越すなんて知らないだろうし!
琴音ー!敦くんよー!」


お母さんが私を呼ぶ。


お願い、何も言わないでそのままこっちに来ないで・・・。


「優子さん待って」


敦がお母さんを止める。


「琴音にはさっき会ってちゃんと伝えたから。」


「けど、最後じゃない」



「いいよ、あいつ悲しむから。
あ、そうだ。
伝言頼んでいい?」


私は反射的に顔を上げる。


伝言・・・?


不安が全身を駆け巡る。


嫌・・・。