12月の普通の日《短編》




「うぅ・・・」


不意に目が覚めると、もう夜になっていた。


私は真っ暗な部屋に入り込む、隣の家の明りを見つめた。


敦・・・。


あの明りの下にきっと敦がいるんだ。


そう思うと、また涙が出てきそうになるから私は逃げるように下に降りた。


階段を下りていると、玄関の方から会話が聞こえた。


「優子さん、ごめんね。いきなり」


聞きなれた声に思わず足を止める。


優子さんは私の母親の名前。


そして--・・・


「ううん、こっちは大丈夫だけど理恵子さんと敦くん本当に行っちゃうの?」


理恵子さん、とは敦の母親の名前。


きっと玄関に居るのは理恵子さんと私のお母さん。


「うん・・・。
旦那の方の実家でさぁ、お父さん倒れちゃったらしくて・・・。
お母さんももういないし、1人じゃ心配だからって旦那がね・・・。」


「そうなんだ・・・。
そっか。いつ引越すの?」


私は耳を疑った。


引越す・・・?


引越すってどういうこと?


頭がぐらぐらする。


敦、引越しちゃうの・・・?


「本当に急なんだけど明日、もう出ようかと思ってて。」


明日・・・?


「明日?!なんで早く言ってくれなかったのよ!」


お母さんが悲しそうに言った。


「・・・私もね、言いたかったのよ?
優子さんにはきちんと。
でも、敦が『頼むから浅水家には言わないで』ってしつこく言うからさ・・・」


はっきりと聞こえる理恵子さんの声に頭を鈍器で殴られたような感覚に襲われる。


なんで・・・?


なんで私たちに言っちゃいけないの?


引越すなんて大事な事、どうして言っちゃいけないの?


敦、意味わかんない・・・。


「・・・そう。
子供も子供で色々あるのよね・・・。
まぁその辺は触れないでおくわ。
あ、そうだ。
最後に敦くんに挨拶したいな!」


お母さんが悲しみを振り払うように明るく言った。


「そうね、優子さんにはお世話になったものね。
ちょっと呼んでくるわ。」


その言葉と同時に玄関がしまる音がした。


敦が来る・・・


どうしよう・・・