あぁ、愛しの執事様

その小さくなる背中を見つめていた、私。

最後の言葉が頭の中で響いていた。

『執事様』でも、「ありがとう」なんて言えるんだ…

似合わない言葉だったけど。

あぁ、きっとあの人は損な性格なんだ。

普通の人が普通に発してもきっとこんなに違和感を抱かないのに。

それでも、少しの人間らしさのおかげでただの怖い人じゃない気がした。

私の心の中のゼンマイが少しだけ回されたようだった。

そして、歯車も少しずつ動いていく。