あぁ、愛しの執事様

見つめ続ける私に訝しそうな表情を向ける『執事様』。

いいんだ、どうせこんな時でないと見つめられないんだし。

女嫌いのこの人と仲良くなるのは、不可能。

憧れは憧れのまま、心に沈めておこう。

「これ、先生が出し忘れてたものです」

鈴木先生に渡された紙を『執事様』に差し出した。

無言で紙を受け取る『執事様』は、紙をチラリと見た。

「あぁ、ありがとう」

素っ気ない声の後、クルリと向きをかえ『執事様』は背を向けた。

そして、もう用はないとばかりに戸口に向かっていった。