「そら」

まるで投げ捨てるように食卓に翡翠が並べたのは、卵かけご飯。

「夕餉だ、食え」

この人、料理ならばそんじょそこらの男よりもずっと出来る。

だが何せ現在の機嫌だ。

その腕前を振るおう筈もない。

「無惨…」

瑠璃が無念極まりない表情で告げる。

めのうなんてもう、あからさまに泣きべそだ。

近年稀に見る酷い夕食。

父に絶対服従の孔雀は勿論、ミニマム跳ねっ返りツンデレ娘の琴子でさえもグウの音も出ない。

善なんて、絶対この夕食の事は恋人の花音に文(ふみ)として認めるに違いない。