瑠璃一味のお戯れな学園生活

ようやくそれらしき家に到着。

表札には『薙沢』と書いてある。

シンには読めない漢字だが、多分間違いないだろう。

玄関のチャイムを押して。

「御免下さーい」

大きな声で呼んでみる。

しばらくするとドタドタと廊下を走る音。

出てきたのは、日焼けした肌、お団子髪、元気のよさそうなクリクリした瞳が印象的な少女。

初等部5年、三女の薙沢 向日葵(なぎさわ ひまわり)。

彼女はシンの顔を見るなり。

「ゆ、勇者!」

不躾にも指差す。

「野菊姉ちゃん秋桜姉ちゃん大変大変!勇者!勇者が攻めてきたぁっ!」

お前は魔王の手下か。

あんまり玄関で大騒ぎするものだから。

「なになに向日葵ちゃん、どうしたのぉっ」

色白、ポニーテール、垂れ目のおっとりした標準的身長の少女が、トタトタと小走りにやって来る。

大人しく父親似、初等部6年、次女の薙沢 秋桜(なぎさわ こすもす)。

秋桜はシンを見て。

「もしかして、リィシン=グリフィノーさんですか?姉のクラスメイトの」

向日葵とは対照的な、丁寧な物腰で話す。

流石、父親の秋帆の聡明な面を受け継いでいるだけの事はある。

てか、これが客人に対する正しい応対。

雛菊、どういう教育してんだ。