瑠璃一味のお戯れな学園生活

「行きます!」

正眼に構えた久遠の竹刀の先が、揺れる。

琴子の棒立ちのようでいて、隙のない立ち姿に攻めあぐみながらも。

「やああああっ!」

鋭い踏み込みからの面打ち!

成程、全国大会常連だっただけの事はある。

素晴らしい『剣道』の腕前。

しかし。

「序曲(ウーベルチュール)」

琴子はこれを納刀したままの酷奏丸で容易く捌き、ビシッ!と籠手を打つ。

納刀したままだから籠手で済んだが、抜身ならば手首が飛んでいる。

余談だが、夕城流、琴月流共に、稽古の時でも防具などつけない。

生身に直接打ち込まれる。

「あうっ!」

思わず竹刀を取り落とす久遠。

「あっ…!」

ちょっと強く打ち過ぎたか。

らしくもなく、久遠の手を心配する琴子。

だがすぐに思い直し。

「痛くても竹刀を放さない!実戦で愛刀を取り落とす事は、それだけで死に直結しますの!」

厳しい声をかける。

「は、はいっ!」

痛みを堪えつつ、久遠はすぐに竹刀を拾った。