姉・音無 奏多の様子がおかしくなったのは、夏頃からだ。

あれは忘れもしない、天神夏祭りの日。

昼頃に剣道部の練習の帰りに一人暮らしの姉の部屋を訪ねたら、姉は浴衣を準備していた。

「あれ?姉さん、夏祭りに行くの?」

久遠の言葉に、奏多はコクンと頷く。

「いつもいつも部屋に閉じこもりっ放しじゃ勿体無いかなぁと思って…」

やれやれ、やっとその気になったか。

久遠は内心安堵の溜息をつく。