ダブルノックダウン。

床に広がっていく血溜まりが、両者の深手を物語る。

「瑠璃!瑠璃てめぇっ!立たねぇかっ!」

リングサイドで龍之介がマットを叩いて絶叫する。

「立てぇシン!立ったらお前の勝ちなんだぞ!立てよぉっ!」

霸龍闘が声を枯らして叫ぶ。

リングに向かって反響する瑠璃、シン両者へのコール。

これだけの声援だ。

意識を失いかけていても、耳に届かぬ筈はない。

手をつき、上体を起こし、ブルブルと体を震わせながら立ち上がろうとする二人。

動く度に血が滴る。

目の前など、霞んでよく見えない。

風を巻いて突進した瑠璃も、炎に身を包んでいたシンも、もう見る影もない。

傷だらけの、ただの男二人だ。

「こ…のっ」

シンが先に立ち上がり、瑠璃にアストレイアを振るおうとするも。

「っ…」

剣が重い。

取り落としてしまう。

瑠璃も立ち上がって斬撃を繰り出そうとするも。

「っ…」

羽のように軽かった柊が、何だこの重さは。

手元から刀が滑り落ちる。

もう得物すら持っていられない。

ならば。

「ぐっ…!」

瑠璃がシンを殴る。

「がっ…!」

シンが瑠璃を殴り返す。

殴る。

殴り返す。

殴る。

殴り返す。

弱々しい拳の応酬。

しかし両者とも、死力を振り絞った戦い。