「……」

翡翠と龍太郎。

立見席で遠い位置ながら、二人は瑠璃と龍之介の試合を見ている。

「硬いな。緊張なんてするタマじゃねぇと思ってたが、瑠璃の奴」

「あれは俺似だが、同時に善の気質も継いでいる…うさぎ娘相手にしどろもどろになるような、精神の弱い面も受け継いだらしい…つまらん漢になりおって…」

共に瑠璃に辛口の評価を下す。

が、実力が劣るとは一言も言っていない。

初戦という事で動きがぎこちないだけ。

リラックスしてくれば、その真価を発揮する筈。

「一度死にかければよいのだ。嫌でも本気が顔を出す」

「おいおい、天神学園で死ぬの殺すのはご法度だぜ?幾らタイマントーナメントでも…」

「構わん、共に俺の弟子だ」

そう言って。

「龍之介っっっっっ!」

翡翠はリングから遠く離れて位置にもかかわらず、すぐにそれと分かるような声で叫んだ。

「遠慮はいらん、未熟者ならその場で剣腕を封じてしまえ」