瑠璃一味のお戯れな学園生活

もう一つ、目に見えた変化といえば孔雀の得物。

二刀だ。

いつもの四季に加えて、刀身の黒い刀。

かつての奥方こはくの得物、銘を『狂奏丸』という。

禍々しい光を帯び、鐡(くろがね)の得物は鋭すぎるが故に、扱う者の肌をも掠め、傷つけると言われた人斬り刀。

世が世なら、妖刀と呼ばれるかもしれぬ刀だ。

その禍々しさは、刀剣に造詣のない奏多でも理解できる。

「…ああ、これ?」

隣を歩く奏多の視線に気づき、孔雀はクスッと笑った。

「母さんから譲り受けたものですよ…ちょっときかん坊で、扱いに困っていますけど」

「そ、そうなんだ…」

孔雀ほどの腕のいい剣士でも、刀の扱いに困る事があるのか。

奏多は、ぼんやりとそんな事を思う。

しばし無言で歩いた後。

「ねぇ奏多さん」

孔雀の方から言葉を発した。

「もし…僕の名字が変わるとしたら、どうしますか?」

「え?」

どういった意味なのか。

夕城とか、琴月とか、詳しい宗家分家の因縁を知らない奏多は小首を傾げる。

いつものような妖艶な笑みを浮かべず、少年らしい純真な瞳でこちらを覗き込む辺り、真面目な質問なのだろう。

だから。

「私は…」

奏多は少女のようにはにかみ、純真に答えた。

「例えば孔雀君が『夕城』のままでも『音無』の名字になったとしても、別の名字になったとしても…私は『孔雀』君と一緒にいます」