黒出目金、姉金、普通に買えば500円はする大物の金魚まで。

鬼龍はホイホイと掬ってしまう。

「お、お嬢ちゃん…その辺にしといてくれねぇかい…こっちも商売なんでな…」

金魚掬いの親父がうろたえ始めた所で。

「そうアルか?ここからが本番アルが…」

わざとポイが破れるように動かして、鬼龍は終了とする。

金魚を入れて持ち帰る水の入ったビニール袋が一つでは足りないほど掬った為、三つに分けて入れてもらった。

「あはっ、取り過ぎるのも考え物アルね」

ペロッと舌を出して笑う鬼龍。

「驚いたな…何事も得手不得手はあるとはいえ…鬼龍にここまで金魚掬いの才があるとは」

感心する瑠璃。

その『得手不得手』のくだりで、鬼龍は気づく。

下駄で上手く歩けなかった事、たこ焼きを持ったまま転んでしまった事。

それを励ます為に、瑠璃は自分が苦手なのも顧みず、鬼龍が得意そうな金魚掬いに誘ってくれたのか。

鬼龍の緊張をほぐす意味も含めて。