「いい…いいぞ勇者」

喉を貫かれ、嗄れた声で黒爪が言う。

「聖人面したお前でも、憎悪に駆られれば殺意を抱く…掟を破ってでも、想い人の仇を討ちたくなる…例え手を汚す事になろうともな」

「…黙れぇえぇぇぇっ…」

「取り澄ました顔をしていても、結局お前も、俺と同じ穴の狢という事だ…一皮剥けば、平気で相手を殺す…」

「一緒にするなぁあぁぁぁあぁあっ!」

再び黒爪を蹴り飛ばして、切っ先を引き抜こうとするシン。

しかし。

「!?」

黒爪はアストレイアの刀身を摑んで引き抜かれる事を阻止。

逆に自ら前に踏み込んで深く刀身を突き刺しつつ間合いを詰め。

「憎悪に駆られた勇者の心など、傀儡にするのは容易い」

大きく口を開いて咬みつこうとする!