そんな光景を見ながら。

「健気じゃないかね。好きな異性の前で、醜く変わり果てた自分の顔を晒したくないとは…愛されたものだな、勇者の小僧」

黒爪は笑う。

さも愉快と言いたげに。

「……」

振り向くシン。

その貌に、明るさはない。

憎悪と怒りで煮えくり返らんばかりの、憤怒の表情。

手にしたアストレイアを抜き、昏い瞳で黒爪を睨む。

「おや?」

黒爪の嘲笑は止まらない。

「まさかお前もその娘を好いていたのか?それは悪い事をしたな…お前が好いているとも知らず、精神に異常を来たしそうなほどに恐怖を与え、追い詰め、追い込み」

口角がつり上がる。

「二目と見れない顔にしてやった」