フッと。

黒爪の右手が消えた。

次の瞬間。

「ぎゃっ!」

野菊が顔を打たれて吹き飛ばされる!

ガンッ!という打撃音。

ガツッ!という壁への衝突音。

ドタンッ!という床への転倒音。

どれも相当大きな音だった。

並の打ち据え方で、こんな音はしない。

埃の巻き上がる中、転倒した野菊は。

「痛い…痛いよぅ…!」

うつ伏せで顔を伏せたまま、痛みに呻く。

「そんなものじゃないよ」

黒爪の、傷口のような口角がつり上がる。

「本当に痛いのはこれからだ」