しばらくして。

衣擦れの音だけさせて、静々と品のいい老婦人が部屋に入ってきて、拓斗とペイン、二人の前に座した。

「お待たせしました。藤家の当主を務めております、藤 更紗と申します」

「御無沙汰しています」

深々と首を垂れる拓斗。

ペインも慌てたようにそれに続く。

「結婚したそうですね、拓斗さん。和音さんに続いて次男の貴方も…橘は栄える一方で御目出度い事です。これで後は花音さん…あの子も夕城のお屋敷の青年と仲睦まじいと聞いています…近々いい知らせが聞かせてもらえるでしょうか」

そう言って、更紗は柔和な笑みを浮かべる。