「好吃(美味い)」

啜り上げためのうの血を堪能しながら、黒爪が呟く。

「やはり見立て通りだ。夕城の娘の血…吸血鬼になって何人か娘の血を啜ってきたが、これ程までの上物には当たった事がない」

「っ…っっ…っっ…っっっ…」

その言葉は、めのうの耳には届かない。

まるでスタンガンにでも打たれた後のように、二度三度と痙攣を繰り返す。

夜桜を取り落とさぬのがやっと。

そこに唯一、剣客としての矜持を感じさせた。

しかし最早これまで。

斬鉄を仕込んだ奥義を繰り出し、精神も肉体も疲弊し、しかも黒爪の毒牙にかかって。

めのうには反撃らしい反撃は出来ない。