思えばシンとリィが星を巡る旅をしていた頃、傘なんてものは使った事がなかった。

雨風は外套で凌ぐのが、冒険者の常識だ。

傘なんて差して歩いていたら、突然凶暴な魔物に襲撃された時に剣や魔銃を抜くのが遅れる。

武器以外のもので手が塞がるのは、死に直結するほど危険な事なのだ。

だから、傘を使う習慣というのはあまりなかった。

現にシンやシルヴィは、今でもあまり傘を差さない。

「だって、ちょっとくらいの雨なら、走った方が速いじゃんか」

「んだ、おれ、濡れるの平気」

まぁシルヴィはドラゴンだから。

服が濡れるとか、髪が濡れるとか、そういうのには無頓着なのかもしれない。