「ハイキングで山登る事だって滅多とないのにぃ…」

愚痴を零しながらめのうが歩く。

言う割には足場選びも上手いし、呼吸も然程上がっていない。

女の子のめのうでさえそうなのだ。

瑠璃や孔雀は音を上げる事なく、黙々と天空険道を登る。

咲花に至っては、自慢の脚力を生かして飛び跳ねるように岩場を進む。

少々のクレバス(氷河や雪渓などに形成された深い割れ目)など、容易く飛び越えてしまうほどだ。

やはり紅月狼の血を引く分、身体能力は人間より上らしい。

人外と言えばもう一人。

「オラめのう、摑まれ」

龍之介が愚痴るめのうに手を伸ばす。

「しんでぇだろうが、少し辛抱しろや。野菊連れ帰るまでの我慢だからよ」

「…うん…」

男らしい龍之介の一面に、只の助平ではないのだと少し見直すめのう。