「妖怪魔物の類には詳しくないが」

歩きながら瑠璃が言う。

「入らずの山という言葉がある…立ち入ると不幸が起きるという禁忌の山という意味で、癖山(くせやま)だの癖地(くせち)だのとも呼ぶらしい…実際は方便であり、そう言い伝える事で深山に棲む人外や魔物に近づけさせない為の嘘だったのだとか…」

しかし世代が変わり、そういった言い伝えを信じなくなった者達が土地開発などで山を切り崩し、どんどん奥地へと分け入っていく。

ある意味これは、傲慢な人間達に対する祟りなのかもしれない。

『人間が万物の霊長という訳ではない』という、自然や神の警告なのかもしれない。