一瞬、何が起きたのか分かんなかった。


美和と私しかいない静かな教室には、美和が私の頬に向かってしたビンタの音が教室中に鳴り響いた。




「みっ………美和?」



十月の夕日が差し込む光のせいで美和の表情が上手く見えない。



でも怒っていることは見なくても分かる。




「晴菜のバカ!!なんでもっと自分に自信持たないのよ!どうせ振られるのが怖いだけでしょ!!」



「ちっ……違うもん!別に怖い訳じゃ…ないもん」




我慢なんかしてない


恋人同士になりたい訳じゃない


一緒にお出かけしたりしたい訳じゃない



なのに……なんでこんな悲しい気持ちになるの?



「少しは自分に素直になったらどう?恋をするのにライバルに遠慮とかしてちゃダメだよ。恋をするって事はその瞬間に神様が与えてくれた奇跡なんだよ。その奇跡を絶対無駄にしちゃダメ!!」



そっか、山本君に出会って恋をしたことは奇跡なんだ

「もっと自分の初恋を大切にしなよ」


美和………



美和のビンタと今の言葉で少し目が覚めた気がした。



ただ、好きでいたいだけ


もしかしたらこれは向き合うのが怖かっただけかもしれない




そうだよ、ホントは…



「山本君と付き合いたいよおおおお」



本音を言ったら、思わず涙が溢れてきてしまった。