「僕が瀕死の状態になるのを見ると、あなたは悲鳴を上げてからその場に倒れ込んだと聞いています。僕たちは別々に病院に運ばれ、僕は何とか一命を取り留めた。しかし目覚めるのが遅かった。あなたの生きていた痕跡はまるで最初からこの世にいなかったかのように綺麗に消し去られてしまったのです」

 美妃は、さっき訪れたローズガーデンでの断片的な記憶を思い出していた。雅臣が膝から崩れ落ちていくあの生々しい記憶を。

「…私を殺すために?」

 彼は目を伏せると、小さくうなずいた。そして自分に不甲斐なさを感じ、後悔しているかのような溜息をついたのだ。

「ごめんなさい…」

 美妃は下を向いたまま小さな声でつぶやくようにそう漏らした。しかし、しんとした狭い密室の中では、彼の耳には十分だった。

「いや…、僕はあなたを守れませんでしたから…」

 彼は小さく笑い、フロントガラスを遠目に見つめていた。そんな様子を見て、美妃は黙って見つめていただけで、それ以上言葉を口にすることができなかった。すると雅臣は目を細め、美妃に寂しそうに笑いながら再び口を開いた。