美妃の鼻歌で六畳ほどの広さのキッチンは満たされていた。数々の手製のご馳走に、二人で食べるには大きいケーキ。そのウェディングケーキを思わせるような真っ白いケーキには、庭で摘んだピンクのバラの花があしらわれていた。

　雄哉の驚く顔が早く見たい…

　自分が作った料理をダイニングテーブルに運びながら、壁にかけられた時計を見て、彼女はそわそわしていた。

　さっき、携帯のメールに彼から連絡があった。

『八時には家に着くよ』

　美妃は、彼の帰宅が待ち遠しかった。その時だった。訪問客を知らせるベルが、彼女の耳をかすめた。

　帰って来た！！

　パッと電気が付いたように明るい顔をしながら、持っていたトレーを適当に置いて、玄関に急ぐ。履いていたスリッパをパタパタと音をさせて、彼女は勢
いよくドアを開けた。