現実の鮮血を肩から流し、眉間にシワを寄せて苦しむ表情の雅臣と、記憶の中の口から血を流し雅臣の苦しそうな顔がぴったりと重なった時、彼女はすっくと立ち上がり、目を見開いて雄哉の顔を見つめていた。その大きく開かれた目からはとどまる事をまるで知らないかのように涙が流れていた。

「私、ずっと会いたかったの。子どもの頃、弟のように可愛がっていたあの子に…。頭の片隅で、ずっとそう思ってた。でもお祖父様に聞いても両親に聞いても、『忘れなさい』と言われるだけで、決して理由を話してはくれなかった…」

 瞬きもせず、彼女は続けた。

「あなたともっと違う形で出会いたかった…」

 そう口にしながら、彼女は雄哉の元に歩み寄り、彼をもう一度抱きしめたのだ。

「二十二口径の拳銃は、殺傷能力が低いんですって。テレビのニュースで聞いた事があるわ」

 彼女は彼を抱きしめたまま、吹っ切れたかのように清々しく、女神のような穏やかな笑みを浮かべながら彼の耳元でつぶやいた。

「寂しい思いをさせてごめんなさい。あなたが私を殺してそれで気が済むなら、そうすればいい」