その瞬間、まるで栓で塞がれていた記憶がフィルムのように映し出され、その巨大な波をタイムマシンで遡っているかのような感覚
が彼女を襲っていた。



『風邪、引いちゃったみたいだ。』

『薬、飲んだ方がいいわ』

 引き出しからいつも飲む風邪薬の瓶を取り出し、彼女は雅臣に手渡した。彼は何の疑いもなく、瓶から三つのカプセルを手のひらに出すと、彼女が用意した水でそれを流し込んだ。

『よし。じゃぁ、出かけようか?』

『外、出ても大丈夫? バラ園はまた次の休みでもいいのよ?』

 彼の体調を気遣い、彼女は彼にそう言ったが、彼は笑いながら「大丈夫!』と口にしながら、玄関へと移動した。

『次の休みじゃ、見頃は終わってしまうよ。美沙、楽しみにしてたじゃないか……