「あの焼け跡から、春日幸太郎氏の残した、お前の母親宛の手紙が何通も出てきたんだ。みんなほとんど同じ内容だった。何通も書いたのに、出せなかったんだろう」

「ふん。後で後悔したって遅いんだよ。…さて、おしゃべりはもうおしまいだ」

 雄哉は拳銃の安全装置をもったいぶったようにゆっくりと外した。美妃の耳元で回るシリンダーの音で、彼女の背筋に悪寒が走った。

「二人一緒? 見てみろよ。お前の雇ったスナイパーは、お前の頭に標準を合わせてるぜ」

「何?!」

 雄哉は佳美の方に視線を走らせると、佳美の小型銃は、雅臣の動きに合わせて雄哉の頭に向いていた。

「ダメ…!」

 その瞬間、美妃は力いっぱい雄哉の体を振り切り、覆いかぶさるようにして彼の胸に飛び込んでいた。その勢いに押され、二人はその場に倒れ込んだ。美妃のその行動に驚いた雄哉は、とっさに身を翻しトリガーを引こうとしたが、美妃がしっかりと彼の背中に腕を回して彼の全てを包み込むようにして抱きしめていたために、そのタイミングを失っていた。