【短編】友達彼氏






「牧瀬・・・!」



「おはよ、成美ちゃん」



加藤の肩に腕を回し、ひょこっとこちらを覗き込む。
加藤は眉間にシワを寄せて、「お前のハナシだよ」と絡み付いた牧瀬の腕を鬱陶しそうに振り払った。



「ふーん・・・ま、悪口じゃないならいーや」



そういう問題なんだ。
やっぱり、牧瀬って変。

いつの間にかナチュラルに私の横に並んで歩いているし。
何も気にしてないような顔してるけど、牧瀬のことだから、色々余計なこと考えてるんだろうな。





「・・・あ、そういえば昨日は傘、ありがとう」



すっかり、忘れかけていた。
思えばこの傘は、昨日、初めて相合い傘をした傘だ。
大事な、大事な、牧瀬の傘だ。


私はそれを、そっと持ち主に差し出した。



「風邪、ひかなかった?」


「うん、大丈夫」


「そっか、よかった」


ふわりと手から傘の重みが消える。

牧瀬が、笑ってる。

こんなに、眩しいほどの彼の笑顔を、私は久々に見た。
私が彼の告白に折れた、あの日以来だ。

いずれ、この笑顔に胸が高鳴る日が来るのだということを、あの時の私に教えてあげたい。