柄に『マキセ』と書かれたビニール傘を手首にぶら下げて歩く。
私が加藤に傘を貸さなければ、牧瀬から借りることはなかったであろう傘。
今日、ありがとうって言葉と一緒に、返そう。
「あ、加藤」
少し先を、一人で歩く加藤を発見した。
おっきな欠伸をして、眠そうだ。
私が声をあげると彼はすぐに気が付いて、くるりと振り向いた。
「ん、おはよ」
「おはよう」
「あ、これ」
加藤はかばんをあさって、ようく見慣れた真っ赤な折りたたみ傘を取り出した。
朝見ると、目が覚めそうな色だ。
それを「ありがと、助かった」と言って、私の手の上にぽんと乗せる。
いや。
かえって助かったのは私のほうだ。
あ、もしかして・・・・

