付き合っていくうちに
不安ばかりが大きくなっていった。
そして奏太と大喧嘩したある日、
事件は起きた。
記憶はなかった。
気付いたらカッターを握り
手首から血が流れていた。
奏太にすぐ泣きながら電話した。
「なに?」
奏太は冷たかった。
「…わたし、記憶がなくて
なにかの病気かもしれない。
気付いたらリスカしてた」
こんな感じの会話だけは、
うっすらと覚えている。
それから仲直りして
腕の傷も消えていったが
大喧嘩するたびにリスカしていった。
無意識的に切っていた。
だんだん腕の傷が
目立つようになってきて
私は腕を隠し始めた。
そのことを知ってる人間は、
そのとき奏太しかいなかった。
自分は頭がおかしいんじゃないか、
自分は何かの病気なんじゃないか、
不安で押しつぶされそうだった。
奏太だけが心の支えだったはず。

