それはありがたかった。


病院の待合室で名前を呼ばれるのを待っていると、俺はある人の姿を発見した。


向こうも俺に気づき、やってくる。


「陵ちゃん」


「...詩織」


俺の幼馴染の、飯田詩織。


なんだか言い慣れない響きだけど。


でもこれから慣れていくから。


俺が彼女の名前を呼ぶと、詩織は微笑した。


簡単に壊れそうで、消えてしまいそうなシルエット。


陶器のような顔に浮かぶ薄い笑みは、だけど本物だ。





「わたしね、病気だったんだ」


あの日、彼女は俺に教えてくれた。